福島県猪苗代町、磐梯山の麓に鎮座する「土津神社(はにつじんじゃ)」は、会津藩の礎を築いた名君・保科正之公を主祭神に祀る、由緒ある歴史と深い信仰をもつ神社です。
四季を味わえる景色が非常に綺麗で、地元の方だけでなく観光客も多く訪れる観光スポットにもなっています。
今回はそんな土津神社の魅力について、神社の皆さまにお話を伺いました。
会津藩のルーツに触れる、350年の歴史
「土津神社は延宝3(1675)年に創建され、今年で鎮座350年を迎えます」と、神社の方は語ります。
この神社は、会津藩祖・保科正之公を主祭神とし、相殿には三代藩主 松平正容公から九代藩主 松平容保公までが祀られています。
正之公は、江戸幕府二代将軍・徳川秀忠の御落胤であり、三代将軍・家光の異母弟。家光・家綱両将軍を支えた名宰相であり、会津藩政を信義に基づいた「文治政治」へと導いた功績から、今なお「義」の心の象徴として崇敬されています。
四季とともに彩る境内の催しと演出
土津神社では、参拝者との交流を深めるために、1年を四季に分けて「春詣」「夏詣」「秋詣」「冬詣」と名付け、季節ごとの限定御朱印の頒布を行っています。
また、花手水、風鈴参道、和傘参道など、訪れるたびに異なる風景が楽しめるよう境内を演出。
そして地域とのつながりも大切にしており、夏にはこども縁日を中心とした夏祭り、秋には紅葉のライトアップ、冬は雪遊びなど、子どもたちにとっての“思い出の場所”となる体験づくりにも力を入れています。
特に白大鳥居の周りは四季を感じられる木々が多くあり、春は桜、秋には紅葉がとても綺麗です。
建築と自然が織りなす見どころの数々
「創建当初の社殿は『東北の日光』と呼ばれるほど壮麗でしたが、戊辰戦争で焼失し、現在は明治13年に再建されたものです」と神社の方。
見どころのひとつが、正之公の奥津城である「奥之院」。主祭神が眠るこの地は、神聖な空気が漂い、訪れる人々の心を引き締めます。また、境内に建つ「土津霊神碑」は高さ7.6メートル、重さ30トンとされ、日本一の大きさを誇る石碑です。建立時には、延べ何千人もの人手で12km先から運ばれたと伝えられ、その逸話にもロマンを感じさせます。
さらに、春には「タカトオコヒガンザクラ」、秋には「イロハモミジ」、冬には雪景色と、白大鳥居と四季折々の風景が織りなす美しさも、土津神社ならではの魅力です。
祈りのかたち——こどもと出世の神さまとして
土津神社が“こどもと出世の神さま”として信仰を集める背景には、保科正之公の生涯があります。
将軍の子でありながら認知されず、不遇な幼少期を過ごした正之公。しかし、養父・保科正光のもとで武士としての教育を受け、やがて幕府の中枢を担う存在にまで成長します。
この波乱に満ちた人生を乗り越え、「義」の精神で幕政を支えた姿は、現代でも多くの人に勇気と希望を与えています。そのため、安産祈願やお宮詣り、七五三といった子どもに関する祈願、そして人生の節目である出世・学業成就・厄除けなどでの参拝が絶えません。
人生に寄り添う神前式——世代をつなぐ結婚式
神前式を目的に訪れる方も少なくありません。四季折々の自然に包まれた境内での挙式は、特別なひとときを演出します。特に、御神紋「会津三葵」の二葉葵には「縁結び」「夫婦円満」の意味があり、神前式にふさわしいご利益があるとされています。
「以前、神前式を挙げた新郎新婦のご両親が、実は自分たちもこの神社で式を挙げたと話してくださったことがありました」と神社の方。
結婚式の後も安産祈願や七五三詣などで訪れ、家族の節目ごとに神社へ足を運ぶ。そのようにして“思い出が循環する場所”としての価値を、土津神社は大切にしています。
ここに住んでいてよかった——心の拠り所として
最後に、神社が訪れる人々にとってどのような存在でありたいかを伺うと、「ここに住んでいて良かったと思えるまちにしたい」とのこと。
「神社は、ふらりと立ち寄れて、変わらずにそこにあり続ける場所。世代を超えて訪れていただき、体験が引き継がれていく。そんな“ささやかな幸せを感じられる心の拠り所”でありたいと願っています」と語ってくださいました。
会津の歴史と自然が息づく土津神社。訪れるたびに異なる表情を見せながら、人生の節目にそっと寄り添ってくれるこの場所は、観光客だけでなく地元の人々にとっても、深い意味をもつ存在となっています。
施設名 | 土津神社-こどもと出世の神さま- |
公式サイトURL | https://hanitsujinja.jp/ |
住所 | 福島県耶麻郡猪苗代町字見祢山3番地 |
営業時間 | 9:00-17:00 ※平日及び12月-3月は10:00-16:00 |
定休日 | 不定休 |