富山県高岡市福岡町にある「高岡市福岡歴史民俗資料館」は、地域の歴史と文化を今に伝える資料館です。かつて町役場として使われていた洋風建築を改修してつくられた建物は、約100年前の趣をそのままに残しており、訪れる人々が大正時代へとタイムスリップするかのような体験ができます。

ここからは、「高岡市福岡歴史民俗資料館」の魅力に迫っていきます！

町民の熱意から生まれた資料館

旧石器時代から近現代までの資料を通して、福岡町の歩みや人々の暮らしを学ぶことができる「高岡市福岡歴史民俗資料館」。同館の歴史は、昭和63年（1988年）に開館したことから始まります。

もともとこの建物は、大正13年（1924年）に寄贈された「公会堂兼町役場」として建てられ、その後は図書館、公民館と用途を変えながら地域の人々と共にあゆんできました。

昭和60年に新庁舎が完成し、旧庁舎としての役割を終えた後、「この建物を残したい」という町民の強い思いが形となり、近代洋風建築のモデルとして保存されることが決定。歴史資料を展示する場として再生されることになりました。こうして、現在の福岡公園内に移転・修改築され、「歴史民俗資料館」として新たな役割を担うことになったのです

大正時代の造りを忠実に再現

建物の改修にあたっては、「できる限り当時の姿を遺す」という方針のもと、細部にまでこだわりが詰まっています。

外観は大正13年当時の設計をもとに、鉄筋コンクリートで再現。シャンデリアや1階のカウンター部分など、状態の良い部分はそのまま活用されています。「遺せるものは遺し、それ以外はより恒久的に保存するために修改築する」——そうした丁寧な工夫により、訪れる人々は今も当時の雰囲気を味わうことができます。

現在では、この建物自体が国の登録有形文化財に指定されており、地域の貴重な文化遺産となっています。

旧石器時代から続く福岡の歴史を学ぶ

館内では、福岡地域に古くから根付く歴史を時代ごとに紹介しています。なかでも注目すべきは、県指定史跡「城ヶ平横穴古墳群」からの出土品。鉄刀や人骨、須恵器などが非常に良い状態で展示されており、古墳時代の人々の暮らしを想像させます。

また、高岡市福岡町の特産品である菅笠（すげがさ）や菅細工の展示も人気です。時代劇などでおなじみの円錐形の笠はもちろん、製作に使われた道具や技法も紹介されており、伝統工芸の奥深さを感じることができます。

さらに展示室の一角には、体験型のコーナーも設けられています。

特に来館者から好評なのが、加茂横穴古墳群22号墓の原寸大模型です。実際に中に入ることができるため、古墳の規模や構造をリアルに体感することができます。

企画展で見つける、福岡町の新たな魅力

同館では毎年テーマを変えて企画展を開催しています。現在は第37回企画展「横穴墓や木舟城から見る福岡町の歴史」を実施中。

城ヶ平横穴古墳群や加茂横穴古墳群からの出土品、中世の平城・木舟城下町の遺物などが展示されています。展示されている金属製品——小柄や鰐口、煙管、古銭など——からは、当時の人々の暮らしぶりや文化を生き生きと感じ取ることができます。

過去には、埋蔵文化財をテーマにしたフォーラムや、刀剣・菅笠に特化した展示も行われ、多くの来館者から好評を得ています。

企画展は11月30日（日）までとなっております。ぜひみなさんのお越しをお待ちしています。

地域とともに歩む資料館に

福岡歴史民俗資料館は、地域とのつながりも大切にしています。地元公民館の協力を得て、夏休み期間中には子ども向けイベントを開催。地元の子どもたちが楽しみながら歴史に親しめるような企画を行っています。

また、周辺の文化施設とも連携し、チラシ設置などを通じて互いの施設への来館を促す取り組みも進めています。小さな地域の中で文化を支え合う姿勢が、今も息づいているのです。

最後に、資料館スタッフより訪れる人へのメッセージをいただきました。

「当館はここに来ることでしか味わえない一種のノスタルジア、郷愁を感じていただける資料館です。外観や内装の美しさだけでなく、木の床が軋む音、小鳥のさえずり、古めかしい匂いなど——五感すべてで大正時代を感じていただけます」

まるで時間がゆっくりと流れるようなこの空間では、歴史を“学ぶ”だけでなく“体感する”ことができます。過去と現在が穏やかに交差する福岡町で、ぜひ日常とは違う日々を過ごしてみてくださいね。