岐阜県高山市にある「高山昭和館」は、昭和の時代を五感で体感できるレトロミュージアムです。
古き良き日本の文化や暮らしを、まるで昭和にタイムスリップしたかのような空間で再現。近年では、世代を超えて注目を集める観光スポットとして、国内外から多くの来館者を迎えています。
今回は施設の成り立ちやコンセプト、コロナ禍を経ての再出発について、インタビューを交えてご紹介します。
原点は「物を大切にする心」
高山昭和館が誕生したのは、「昭和という時代の記憶を、後世に残したい」という想いからでした。
創設者である故・五味館長は、消費が美徳とされた社会の中で、役目を終えた日用品や文化的資料が次々と捨てられていく現状に危機感を抱き、それらを収集・保存していきました。
「昭和を振り返ることで、21世紀の社会がどうあるべきかを考える原点になってほしい。そんな思いで始めた施設です」
このように施設内には、昭和のお茶の間や商店街、学校など、当時の街並みを忠実に再現した空間が広がります。
展示されているのは、高価な骨董品ではなく、当時多くの家庭にあった日用品。あえて“ありふれた品々”を展示することで、誰もが共感し、懐かしさを感じられるよう工夫されているんです。
見て、触って、感じる「体験型」ミュージアム
展示は単なる「観賞」ではなく、リアルな体験を重視しています。たとえば、昭和のカメラを実際に手に取れば、その重みや質感から、ものづくりの精神や技術力を肌で感じることができます。
「ガラクタに見えるかもしれませんが、重みやロゴの細部には当時の作り手の想いが詰まっています。時代の空気を感じてほしいです」
映像資料室では、昭和のニュースや映画、ドラマを上映。当時の音楽やナレーションが流れる中、過ぎ去った時代を多角的に味わうことができます。
施設内には実際の昭和時代の建材を使用し、音や匂いまで当時の空気感を再現しているのも特徴です。
教育機関との連携と、若者へのアプローチ
高山昭和館は地域の教育活動とも積極的に連携しています。地元の学校との就業体験、修学旅行の受け入れ、生徒主体の観光企画への参画など、子どもたちが“生きた学び”を得られる環境を整えています。
また、近年では若者や外国人観光客の姿も多く見られるようになったとのことです。
「SNS映えをきっかけに来てくださる若い方も増えました。最初は“面白そう”でも大歓迎。そこから昭和の奥深さを感じてくれればうれしいです」
コロナ禍での気づき、そして再出発
コロナ禍では一時休館を余儀なくされましたが、その間に「昭和館の存在意義とは何か」を見つめ直す時間が生まれたといいます。
従来は昭和世代の懐かしさに訴える施設でしたが、これからは「未来の世代に向けて価値を伝える施設」への変革が必要だと考えるようになりました。
その結論が次の2つ。
1つは、昭和初期の苦難を乗り越えた人々のパワーと情熱を若い世代に伝えること。
2つ目は、昭和の文化や生活にあった“心の豊かさ”を、面白く、楽しく伝えること。
この新たなミッションのもと、展示内容や演出、発信手段を見直し、SNSや動画を活用した広報、デジタル技術を取り入れた体験などを強化。昭和と令和が交差する“ハイブリッドな観光体験”が実現しつつあります。
今こそ見直される“昭和の知恵”
今、社会全体が「持続可能な暮らし」や「ものを大切にする心」を再評価する時代に入りました。高山昭和館が掲げてきた理念は、まさにSDGsが目指す方向と一致しています。
「“ECO=COOL”という価値観の変化は、私たちにとってとても喜ばしいことです」
一見“懐かしさ”のための施設に見えるかもしれませんが、そこには未来を生きる私たちにとってのヒントがたくさん詰まっています。
だからこそ今、高山昭和館は大人にも子どもにも、新たな刺激と気づきを与える観光スポットとして注目されているのです。
最後に、訪れる皆さまへ
館内には、昭和を象徴する品々や町並みが広がり、五感を通じて当時の空気感を味わえます。どんな目的でも構いません。「懐かしい」「面白そう」「写真を撮りたい」──その一歩から、きっと何かを感じ取っていただけるはずです。
高山昭和館は、昭和を“語り継ぐ”だけではなく、未来に“つなぐ”場所へ。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
基本情報
施設名 | 高山昭和館 |
公式サイトURL | https://showakan.jp/takayama/ |
住所 | 岐阜県高山市下一之町6番地 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | 無し |