【インタビュー】しまなみ海道の海辺で10年—イタリアンレストラン「Tramonto」店主が語る、“日常の中のごちそう”とは

愛媛県と広島県を結ぶ絶景ロード「しまなみ海道」。その穏やかな海を臨む瀬戸田の一角に、ひっそりと佇むイタリアンレストランが「Tramonto(トラモント)」。

イタリア語で“夕暮れ”を意味するこの店は、名前の通り、海に沈む夕日を眺めながら本格イタリアンが楽しめると評判です。

地元の人々はもちろん、自転車で旅する人々や海外の観光客にも愛されてきたこの店は、今年で開業10周年を迎えました。

今回はレストランに込めたこだわりや思い、これから目指す姿について、オーナーの佐藤さんにじっくりお話を伺いました。

この場所にしかない味をつくりたかった

——10周年、おめでとうございます! まずはこのお店を始めたきっかけを教えてください。

佐藤さん:

ありがとうございます。地元がこのあたりなんですが、20代の頃はずっと東京やイタリアで修業をしていて、料理人として独立するなら「地元に戻って、ここでしかできないことをやりたい」と思っていました。

しまなみ海道は、海も山も近くて、食材が本当に豊かなんです。瀬戸内の魚介、柑橘類、地元野菜……。それらを生かした“土地の味がするイタリアン”を、自分の手で作ってみたかった。それが「Tramonto」のはじまりです。

「瀬戸内×イタリアン」——地元食材への愛と信頼

——“土地の味がするイタリアン”という言葉がとても印象的です。具体的には、どんな工夫をされているのでしょうか?

たとえば、パスタに使うレモンは生口島の有機レモン、魚介は朝一で港に並ぶものを漁師さんから直接仕入れています。トマトやハーブも、自分たちで育てているんです。

「イタリア料理=輸入食材」と思われがちですが、実は“地元の食材で作ること”がイタリアンの本質ではないかと考えています。各地で手に入るもので作るのが、イタリアのおばあちゃんたちの家庭料理でもありますし。

だからこそ、ここ瀬戸内でしかできない料理を追求しています。魚のカルパッチョも、地元の真鯛にレモンの皮を削って香りを添えたり、味の土台はイタリアだけど、素材の声を聞いてアレンジするようにしています。

海を見ながら、特別じゃない“ごちそう”を

——お店の立地もとても素敵ですね。大きな窓から見える海と夕焼けが、本当に印象的です。

ありがとうございます。ここは、もともと古い民家だったんです。それを全面的にリノベーションして、「海を見ながら食事できる空間」にしました。

夕方になると、店名の通り美しい“トラモント(夕暮れ)”が海に映るんです。あの景色を見ながら過ごす時間は、なににも代えがたいですね。

ただ、僕たちが目指しているのは、“特別すぎないごちそう”です。かしこまらず、でも少し贅沢に、誰でも気軽に来て、少しだけ背筋が伸びるような時間を過ごしてもらえたらうれしいです。

地元の若い人たちにとっての“夢のある場所”に

——今後、「Tramonto」をどんな場所にしていきたいですか?

10年やってきて感じるのは、この店が地元の人にとっての誇りになってきたということです。「遠くから友達が来たから、ここに連れてきたい」と言ってもらえるのは、本当に嬉しいですね。

これからは、もっと地元の若い人たちと関わっていきたいです。料理人を目指す子、サービスを学びたい子たちに、「自分の町にもこんな店があるんだ」って思ってもらえる場所にしたい。

それに、田舎でも十分に魅力的なレストランが成り立つというモデルケースになれたらと思っています。観光だけじゃなく、“暮らしの中にあるレストラン”として、これからも地域と一緒に歩んでいきたいですね。

最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします

しまなみ海道は、自転車で旅する人にとっても、のんびり海を眺めたい人にとっても、最高の場所です。

その旅の途中に、少しだけ立ち止まって、海と料理を味わってもらえたら。Tramontoが、その小さなひとときの記憶に残るような存在になれたら嬉しいです。

10年目の今、あらためてこの土地に感謝しながら、また一皿一皿を丁寧に作っていきたいと思っています。

まとめ

佐藤さんの言葉からは、料理人としての情熱だけでなく、地域とともに歩む覚悟が伝わってきました。

もし、しまなみ海道を旅するなら、海風に包まれながら地元食材のイタリアンを楽しめる「Tramonto」で、心に残る時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

基本情報

住所 愛媛県今治市砂場町3丁目19-20
営業時間 ランチ:11:00〜14:30
ディナー:17:00〜22:00
※月曜定休日
多言語対応 英語・イタリア語
予算 ランチ:1,000円〜3,000円
ディナー:5,000円〜10,000円