縄文文化を“見る・触れる・感じる” ― 山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館で、誰もが楽しめる歴史体験を

山形県高畠町に位置する「山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館」は、縄文時代から古代にかけての出土品を展示し、誰もが歴史にふれることのできる貴重な場所です。

訪れた人々に、ただ“見る”だけでなく、“感じて・つくって・学ぶ”体験を提供するこの施設は、近年、観光客や訪問客の新たな目的地として注目を集めています。

今回は、同館が訪問客を惹きつける理由や、山形ならではの考古資料の魅力についてお話を伺いました。

“感じて・つくって・学ぶ”体験が人気

「山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館」がある高畠町は、縄文時代の代表的な押出遺跡や日向洞窟、古墳時代の安久津古墳群など、複数の時代をまたぐ遺跡が点在する非常に希少なエリアであり、その文化的価値は高く評価されています。

そんな高畠町にある「山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館」に関してまず最初にお伺いしたのは、人気の体験型イベントについて。

担当者の方によると、毎年5月の連休に開催される「赤ちゃんの手形をつくろう」が、館内でもっとも人気の高いイベントとのこと。小さな命の記録を土に刻むこの催しは、家族の記念としても好評です。

また、ガラス工芸の魅力に触れられる「ガラス玉をつくろう」も、多くの来館者が楽しみにしているイベントの一つ。こうした体験を通じて、考古学をより身近なものとして感じてもらえる工夫が随所に見られます。

国の重要文化財「彩漆土器」は必見の展示品

展示されている出土品の中でも、ひときわ注目を集めているのが、国の重要文化財に指定されている「彩漆土器(さいしつどき)」です。

これは、館のある高畠町・押出遺跡(おんだしいせき)から出土したもので、赤と黒の漆で美しく彩られた縄文時代前期の貴重な土器。湿地帯であったがゆえに、当時のままの形で良好な保存状態で発見されました。

また、同じく高畠町にある日向洞窟(ひなたどうくつ)からの石器類も多数展示。日向洞窟は国の史跡にも指定されており、山形の考古学的価値の高さを物語る資料館の中核を成しています。

小学校の修学旅行先としても人気に

同館は教育機関との連携にも力を入れており、地元・高畠町の小学校だけでなく、山形県内各地の小学校が修学旅行や体験学習の場として訪れています。

特に庄内地方からの来館が増えているとのことで、見学に加えて勾玉作りや火起こし、弓矢射ちといった体験活動を通じて、縄文時代の暮らしを体感できる内容が好評です。

山形県ならではの“地元に根ざした展示”

同館の特徴は、「山形県内の考古資料」に特化している点にあります。

日向洞窟や押出遺跡、安久津古墳群(あくつこふんぐん)など、町内に複数の時代の遺跡が点在しているのは全国的にも非常に珍しいとのこと。高畠町周辺が古代においても文化的中心地であった可能性を示す遺跡の数々は、地域性を強く感じさせてくれます。

大人も子どもも、五感で学ぶ「体験型考古学」

考古学に特化した施設であることから、全国の考古学ファン、縄文時代のファンが訪れるため、一般向けの企画も充実。

「大人の自由研究」と称して、縄文時代の人々の暮らしの一部を体験するイベントもあり、カラムシから繊維を取る作業や、鮭の塩引きづくりなど、古代の暮らしに触れられる本格的な体験が用意されています。

子ども向けには、勾玉や弓矢、古代風ブレスレットづくりといったイベントもあり、家族で訪れてもそれぞれに楽しめる内容になっています。

「考古学は歴史に直接触れる学問」

最後に、これから訪れる人々へのメッセージを伺いました。

「考古学は、文献を読むのではなく、“実際に使われていたもの”を通して過去を知る学問です。歴史に興味がないという方にも、想像を膨らませながら昔の人の暮らしを感じてもらえるきっかけになれば嬉しいです」

と語る担当者の言葉には、施設全体が持つ温かな想いが込められています。

歴史を「難しいもの」としてではなく、「見て・触れて・感じるもの」として伝えてくれる、山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館。知的好奇心をくすぐる展示と、心に残る体験が、訪れた人々の記憶に長く残るに違いありません。

施設基本情報

項目 内容
施設名 山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館
公式サイト https://ukitamu/pupu.jp
所在地 山形県東置賜郡高畠町大字安久津2117
開館時間 9:00〜16:30(最終入館16:00)
休館日 毎週月曜日、国民の祝日、年末年始(12月28日~1月4日)。
〔臨時開館〕5月3・4・6日、11月3日。
(5月5日こどもの日と11月3日文化の日は無料開館日。
〔臨時休館〕5月7日(火)、11月4日(火)