栃木県日光市・鬼怒川温泉は首都圏からのアクセスも良く、古くから多くの観光客を迎えてきた温泉地です。
その鬼怒川温泉郷で長年にわたり愛されているのが、銘菓「きぬの清流」をはじめとした虎彦製菓株式会社の銘菓たちです。
今回は、同社の歩みや看板商品の誕生秘話、そして観光地に根ざした菓子づくりについてお話を伺いました。
観光地にふさわしい銘菓を目指して創業

虎彦製菓株式会社の創業は昭和初期にさかのぼります。
昭和4年、東武日光線の開通をきっかけに鬼怒川温泉郷は関東有数の温泉地として発展し、「東京の奥座敷」と呼ばれるほど多くの観光客で賑わうようになりました。しかし当時、この地には土地を代表する郷土菓子がなかったといいます。
金沢で菓子職人として修業を積んだ創業者・林虎彦氏は、「観光で訪れる方に喜ばれる、鬼怒川ならではのお土産を作りたい」という強い想いを抱き、この地で菓子づくりを始める決意をしました。そ
の想いが、現在まで続く虎彦製菓の原点となっています。
鬼怒川の情景から生まれた「きぬの清流」

同社を代表するお菓子「きぬの清流」は、鬼怒川温泉郷の自然そのものから着想を得て誕生しました。
創業者の林氏が、鬼怒川の川面を眺めながら菓子の構想を練っていたある晩、月影が静かに水面へ映り込む幻想的な光景に心を打たれたことがきっかけだったといいます。
雄大な鬼怒川渓谷と、その流れが生み出す自然美への感謝の気持ちを込めて名付けられた「きぬの清流」。その名の通り、鬼怒川温泉を訪れた人の記憶と情景をそっと呼び起こす存在として、長年愛され続けています。
鬼怒川という土地柄について
虎彦製菓が日光市・鬼怒川温泉に拠点を置く最大の魅力は、日光国立公園土産としての地域性とブランド力を最大限に活かせせる点です。温泉地という非日常の空間で出会うお菓子だからこそ、その土地ならではの背景や物語が、より深く記憶に残っています。
地域の風土や観光文化とともに歩んできた歴史が、商品の価値を一層高めているのですね。
素材と製法へのこだわりが生む独特の食感

虎彦製菓の菓子づくりにおいて特徴的なのが、油脂・保存料・合成着色料を使用しない製造方針です。
「お菓子は人を笑顔にするもの」という考えのもと、大切な人を想って選ばれる存在であり続けたいという想いが、その姿勢に表れています。
「きぬの清流」は、砂糖と小麦粉を卵で丁寧に練り上げ、厚さ0.6ミリの銅板で両面を焼き上げた“和風クッキー”に、小豆餡をサンドしたお菓子です。パリッとした生地が餡の水分をほどよく吸収し、時間とともに生まれるしっとり感が独特の食感を生み出します。
この繊細な仕上がりは、素材選びと焼き加減への細やかな配慮によって支えられています。
四季と地域性を伝える季節限定商品

「きぬの清流」には、定番の小豆餡に加え、季節限定の商品も用意されています。春には栃木県産いちご「とちおとめ」を使った餡の甘酸っぱさ、秋には栗のまろやかな甘みを通じて、日本の四季を感じられる工夫が施されています。
日光国立公園銘菓として観光や帰省の土産に選ばれてきた背景には、「その土地を訪れた記憶を味として残したい」という虎彦製菓の一貫した姿勢があります。
季節や地域性をお菓子に映し出すことで、訪問客の体験価値を高めています。
また、「きぬの清流」が観光地で長年選ばれている理由には、半世紀以上にわたる販売実績と栃木の名産品である「とちおとめ」を使用している点も関わっています。
地元の素材と歴史が結びつくことで、「栃木を代表する銘菓」としての認知が自然と広がってきたのです。
また、個包装で配りやすい点や幅広い年代に親しまれる優しい味わいも、観光客にとって選びやすいポイントとなっています。
これから訪れる方へ
最後に、虎彦製菓からメッセージをいただきました。
「創業以来、約半世紀にわたり、まごころを込めてお菓子を作り続けてまいりました。これからも安全で安心な“美味しいお菓子”をお届けすることを使命とし、地域社会の発展に貢献していきたいと考えています。ぜひ、昔ながらの製法で焼き上げた和風クッキーの独特の食感と味わいをお楽しみください。」
鬼怒川温泉を訪れる楽しみのひとつとして、「きぬの清流」をはじめとした虎彦製菓の銘菓に触れてみてくださいね。
| 施設名 | 虎彦製菓株式会社 |
| 公式サイト | https://torahiko.co.jp/ |
| 住所 | 栃木県日光市鬼怒川温泉滝428 |
| 営業時間 | 8:00~16:30 |
| 定休日 | 木曜日、日曜日 |
