自然の恵みを一杯のグラスに込めて──能登ワインが“訪れたくなる場所”へ

自然豊かな能登半島・穴水町にある「能登ワイン」。ブドウ栽培から醸造、販売までを一貫して行い、能登の風土をワインに映し出すワイナリーです。

地元資源を活かし、訪れる人を魅了する風景と味わいで、いま観光客の注目を集めています。

地域復興の一翼を担いながら、多くの人が「また訪れたい」と思える場所を目指すその想いと取り組みを伺いました。

「地域を元気にしたい」──能登ワイン誕生のきっかけ

能登ワインが設立されたのは、能登空港の開港をきっかけにしたものでした。

地元に根ざした観光資源や特産品をつくり、首都圏をはじめ全国から人を呼び込もうという地域振興の一環として、2002年に創業されました。

「能登の自然を生かしながら、地域を元気にする拠点を作りたいという想いでスタートしました」と語ってくださったように、地元に根ざしながらも、広い視野で観光と農業、そして文化をつなぐ挑戦が始まったのです。

ワインの香りとともに、訪れる人の心まで温かく包み込むその場所は、いま観光客からも注目を集めています。

穴水町という“入り口”の魅力

ワイナリーのある穴水町は、のと鉄道の終着駅「穴水駅」や、能登の空の玄関口「のと里山空港」に近く、奥能登を訪れる観光客にとっての玄関口ともいえる場所です。

ワイナリーの敷地には、総面積およそ25ヘクタールにも及ぶ広大なブドウ畑が広がっています。ブドウ畑は丘陵地にあり、海からの適度な風が吹き抜け、湿気による病害の予防にもつながっています。

「風通しの良いこの環境は、ブドウにとっても心地よい場所なんです」と語るように、自然の地形を最大限に活かした栽培が行われています。

土壌づくりにも能登らしさを

能登ワインでは、効率よく日光を浴びられる「垣根式栽培法」を採用していますが、さらにユニークなのが、地元特産の“牡蠣の殻”を活用した土壌改良です。牡蠣の殻には豊富なミネラルが含まれており、それを畑に投入することで、ブドウにとって理想的な栄養環境を整えています。

こうした努力が実を結び、能登のワインは「日本人の味覚に親しみやすい、香り豊かでフレンドリーな味わい」に仕上がっているといいます。

ヤマソーヴィニヨン──日本発の個性派ワイン

なかでも注目なのが、日本原産のブドウ品種「ヤマソーヴィニヨン」を使った赤ワイン。

ブルーベリーのような黒い果実の香りとしっかりした酸味が特徴で、「すき焼きや豚の生姜焼き、ナポリタンなど、しょうゆやみりんを使った家庭料理にとてもよく合います」とのこと。

能登ワインでは、こうした“和食に合うワイン”の開発にも積極的で、地元の食文化との相性を大切にしています。

四季折々に訪れる楽しみ

能登ワインを訪れる醍醐味のひとつが、ブドウ畑の四季折々の表情を感じられることです。

春は4月中旬に桜が見ごろを迎え、夏は日照時間も長く、ブドウがぐんぐん育つ姿が見られます。特に8月~9月にかけては、たわわに実ったブドウが畑を彩り、まさに絶景。秋には涼しく過ごしやすい気候のなかでワインの収穫が行われ、冬は雪景色の中で静かなワイナリーの風情を楽しむことができます。

「ロゼワインは、ワイン初心者の方にもおすすめです。甘酸っぱくてさわやかな味わいなので、気軽に楽しめますよ」と話すように、ビギナーにもやさしい魅力がたくさんあります。

また、ワインが飲めない方やお子さまでも楽しめるよう、見学施設ではワイン醸造の過程をガラス越しに見られたり、ぶどうジュースの試飲も用意されています。

能登半島地震からの再出発と、観光への期待

2024年に発生した能登半島地震では、地域全体が大きな被害を受けました。能登ワインでも畑や設備への影響がありましたが、現在は地域とともに少しずつ復旧が進んでいます。

「観光のお客様が来てくださることが、私たちにとって何よりの励みです。夏にはぜひ、実りのブドウ畑を見に来てほしいです」

と語る担当者の言葉には、地域とともに歩む姿勢がにじみ出ています。

ワインづくりを通して地域の魅力を発信し、訪れた人に「また来たい」と思わせる力が、ここ能登には確かにあります。次の旅の目的地に、能登のワイナリーを加えてみてはいかがでしょうか。

基本情報

取材先 能登ワイン株式会社
公式サイトURL https://notowine.shop-pro.jp/
住所 石川県鳳珠郡穴水町旭ヶ丘リ5番1
営業時間 9:00~16:30
定休日 12/31~1/3